「相談する勇気を」~感動の人権作文より
下記に紹介します作文は,「広報とくのしま」に掲載されていました。
とてもしっかりとした内容で,相談業務を行なっている私たちも,あらためて相談の大切さを感じました。
ご本人は本当につらい思いをしたでしょうが,つらい気持ちが,これからいろんな方と出会い,学び,大人になるつれ,よい経験だったと思える日がくることを願います。
私は,中学生のときに,悩んでいる方の助けになりたい,そのような仕事がしたいと思っていませんでした。偶然が重なり,結果的に相談を受ける仕事に就いていますが,彼女のような経験をした方が,法律家を目指してくれたら,とても心強いです。
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「第35回全国中学生人権作文コンテスト鹿児島県大会」
【NHK鹿児島放送局長賞作品】
「相談する勇気を」
徳之島町立井之川中学校 1年 田之畑 奈保子
今,自分の身の回りで 「いじめ」を受けている人はいないだろうか。自分がいじめられているという人はいないだろうか。
そんな人たちに伝えたい。
相談することの大切さを。
「もういい。聞きたくない 」。 私は目に涙をためながら,思い切りさけんだ。 「私は奈保子の味方だからね 」。 帰り道,そう言ってなぐさめてくれていた私の一番の友達。彼女も私の悪口を言っていたなんて…。もうだれのどんな言葉も私の心には届かなかった。本当 に悪口を言っていたのだろうか信じたくない気持ちとやっぱり言ったのだろうと親友への失望感で私の心は,おしつぶされそうだった。小学五年生の冬。
私が立ち直れたのは,相談をしたからだと思う。
私は,自分がいじめられていることをだれにも,絶対に話したくなかった。家族に心配をかけてしまうから,一人でも解決できると思っていたからだ。でも,一人でなやむことは,とてもつらく,家族に話すことにした。
涙ながらに話した私の話を,家族は真けんに聞いてくれて,受けとめてくれた。
心の中は,すっきりとした。
私は,相談をして良かったと,心の底から思った。自分の思いを言葉にのせてはき出すことで,心がどんどん軽くなっていくのを実感した。 最近,テレビのニュースや新聞で 「いじめ「自殺」という言葉を多く見聞きする。いじめが原因で自殺した中・高生が今までに数えきれないほどいる 。
いじめはなぜ,起こってしまうのだろう。私は考えた。
いじめをする人の心の中に,自分とちがう価値や考え方を持った人を認めようとしなかったり,ばかにしたりする気持ちからうまれるものだと私は思う。人はだれでも,このような気持ちがわき出るかもしれないが,それは,間ちがいであることで,おかし いことだということに,いじめている人は気付いてほしい。いや,気付かなければならない。そして,いじめられている人は,間ちがいにだまらずに,自分の心のさけびを声に出してほしいのだ。
だから,だれにでも,少しでも,相談してほしい。絶対に。
相談することは,家族にもっと心配をかけるかもしれない。いじめがエスカレートするかもしれない。そんな心配があるかもしれない。
しかし,私は,相談することによって,自分の思いを分かってもらい,一人じ ゃないと思える,安心感がうまれた。
自分の気持ちを分かってくれる人がいるということを心強く思った。また,人を再び信じることができた。
人は,話すことによって,自分ではどうすることもできない,ぐしゃぐしゃにからみ合っ ている色んな感情が整理されて,きっと,見えてくると思う。
私は言いたい。いじめが原因で自殺する勇気があるのなら,相談する勇気を少しでも持ってほしい。命を落とすということは,どんなことよりも,家族や身近な人を,最も 悲しませることだ。 私は,相談したことによって,友達との間にあったわだかまりが,徐々に解 けていった。
松谷みよ子さんの「わたしのいもうと」。この本の一番最後の文章が,私の 心に残っている。
「わたしを,いじめたひとたちは,もうわたしを わすれてしまったのでしょうね。あそびたかったのに,べんきょうしたかったのに 」。
いじめは,人の心を閉ざしてしまうほど,おそろしい,ま物のような力があるのだと 読むたびに感じる。そのおそろしい力に 心がこわされてしまう前に , 少しでも,相談できていたら,心のさけびを伝えることができていたらなと思う。
これからも,困ったり,なやむことがあったりしたら,必ず,家族や先生, 友達に相談する勇気は忘れずに 持ち続けていたい。また,相談を受けとめ , ,話を聞いてあげられる人にもなりたい。
きっと,あなたを思い,支えてくれる人がいる。必ず。絶対に。
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