詐欺と強迫では,どちらが救われるか。
本日は詐欺と強迫
詐欺とは人をだますことです。詐欺によって契約を結んだ場合でも、必ずその内容を守らなければならないというのは、あまりにも気の毒です。そこで、民法では
「詐欺による意思表示は、取り消すことができる」と事後的に騙された人を保護しています。そして、契約が取り消されると、その契約はなかったこととして扱われます。
一方、強迫とは人をおどすことです。こちらも強迫によって契約を結んだ場合でも、必ずその内容を守らなければならないというのではあまりにも気の毒なので、民法では
「強迫による意思表示は、取り消すことができる」と事後的に強迫された人を保護しています。
一見、ここまでは同じですね。
では、この詐欺と強迫なにが決定的に違うのでしょうか?
それは、新たに第三者が取引関係に入ることによって、状況が変わります。
詐欺の被害者から不動産を手に入れていた加害者が、この事情を知っていた第三者に売却した場合、詐欺の被害者はこの第三者に詐欺の加害者に対するのと同様に取消を主張し、返せということができます。但し、この詐欺の事情を知らなかった第三者には、返せということができません。
一方、強迫の場合は、新たに取引関係に入った第三者に対して、この事情を知っていようが、知らなかろうが、取消を主張し返せということができるのです。
この違いはどこからくるのでしょうか。答えは簡単。
同じように、不動産の権利は動いて行っているように見えますが、保護の必要性ということで、取扱いに差が生じているのです。わかりやすくいうと、巧みなウソで売る契約しちゃった人より、身の危険を感じて、やむなく契約しちゃった人を保護しましょう、ということになります。巧みなウソでも、ある程度確認すればウソと見抜けたんじゃないの?という過失を考慮したんですね。強迫は極端に言えば、逃げられない状況下での契約ですから、保護の度合いが高いのです。
特に不動産取引は,慎重に冷静に手続きをすることが大切です。
行政書士 わたなべ