体温_雨降る離島の夜の過ごし方
多⽥尋⼦・⼩説集
「体温」
⼤⼈の恋愛⼩説集という、私の選択肢の中に存在しないジャンルを選んでみました。
書籍の表紙は,苦悩と、苦痛,その中に艶やかな性や経血が表現されているようで,妄想を掻き⽴てられ,作者の紡ぐ其々の主⼈公の「体温」を⼿に取った、そんな感じです。
其々の物語に登場する⼥性達は、⼀⾒、艶めかしいこととは乖離した、容姿や境遇にあり,本⼈でさえ、それは⾃分には起こり得ることのないこととして⻑い間⽣きています。
ただ、⽬の前にいる⼈を意識し、各々が⾃問⾃答する。
⼼弱い⾃分と、危険だと反応する頭とその⼼の移りゆく、反復する様が
この己だけが感じる。
⼈知れず昇降する「体温」の変化のようで短編集ではありますが,読み応えがあります。
結局そのあとどうなるのか、直前の主⼈公の⼼の動きから,想像するしかないのですが、⾏き着くところまでいくのか,それとも、やはり⾏かないのか
読み終えても、妄想と余韻がずっと続きました。
映像化するなら、主⼈公達の内なる声を,その艶を,どのように表現するのだろう。
そんなことを考えながらあれこれキャストを妄想してみる。
娯楽といっては失礼、静かな、それでいて鮮やかな,単純ではない⼤⼈の恋愛⼩説、芥川賞候補著者の腕前に感服しました。
⾬の降る夜、是⾮読んでいただきたい恋愛⼩説集です
社労士・行政書士 かしむら