心が解れる瞬間
こんにちは。
秋風が吹き,朝晩エアコンをoffできるようになった徳之島から。
最近ポチッた書籍が立て続けによいものでしたので,そのうちの1冊をご紹介。
黒澤いづみ「人間に向いていない」
ある日突然発症し,一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる病「異形性変異症候群」。
政府はこの病に罹患した者を法的に死亡したものとして扱い,人権の一切を適用外とすることを決めた。
不可解な病が蔓延する日本で,異形の「虫」に変わり果てた引きこもりの息子を持つ一人の母親がいた。
あなたの子どもが虫になったら,それでも子どもを愛せますか?
子どもの頃抱いた,親に対する感情,何人も子を育てている間に起った出来事,そしてその時母親である私が,感情のままに投げつけてしまった言葉達。
それらが断片的に私自身から引きずり出される感覚を何度も味わいました。
主人公の母親は,自分の高齢の母親から肯定の言葉をもらうことで,心が解れ,我が子もそうしてほしかったのではないかと気づきます。
どうしてそうなってしまったのかのベクトルを自分に向け,原因が自分にあることを認め,そして,すべてを受け入れようと腹をくくることで,現実が動き始めます。
肯定されたかった
「あなたは悪くない,大丈夫,心配しなくていい」
正しいことだけをして生きてきた人もいないし,
悪いことだけをして生きてきた人もいない。
どちらも一人の人間の中に半分づつくらい存在し,生きてバランスを保っているというのが正直なところではないでしょうか。
私自身は様々な方のお話を聴くこと,本人でさえ気づいていない己の内なる声を引出し,支援をすることも生業としているおりますが,
本当に苦しい時,本当は自分が悪いことも知っていて,それでも誰かにそっと,優しく
「あなたは悪くない,大丈夫,心配しなくていい」
そう肯定されることで,心が解れ,救われます。
唯一の見方であるはずの親に否定され続ければ,歪んでしまう,異形の姿となってしまう,でも本当は異形の姿になる前に,既に心はとっくに異形になっていた。
本当に終わりに差し掛かるところで,文中,肯定されない者の苦しみが溢れて,その苦しさが渦巻き,諦めと絶望が語られている場面があります。
その語りがあることで,今だ苦しみの中にいる多くの人を想像します。
現在進行形で苦しむ家族がいるということを感じます。
生活困窮者自立支援制度
全国の福祉事務所設置自治体が実施主体となって、官民協働による地域の支援体制を構築し、自立相談支援事業、住居確保給付金の支給、就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業その他生活困窮者の自立の促進に関し包括的な事業を実施します。
現在行政が進めている事業です。
あえて見ようと思わなければ,見えないかもしれない,そもそも見られないように,世間から遠ざかるように息を殺している当事者がいるとうことを理解し,支援をしなくてはなりません。
第三者として関わる瞬間,何もできないかもしれない,でも,傷つけない丁寧な聞取りと相手に配慮する,適度な距離感と安心を届けたい,そう感じました。
是非,多くの方に読んでいただきたい書籍です。
社労士・行政書士 かしむら