見えないこころとこころを紡ぐ意思決定支援
「本当の気持ちに出会うとき」 宮下智著
Nothing About Us Without Us
(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)
皆さん,このフレーズどこかで聞いたことはありますか?
障がい者権利条約の起草に関する交渉において,障がい者当事者間で使われたスローガンです。
「お心主義」
繰り返される行動の裏には,本当の気持ちが潜んでいる
究極に生きづらい人々に寄り添い,常に共に前を見て支援し続ける姿が描かれた書籍に圧倒されました。
自分の想いとは裏腹に動いてしまう行動パターンから生じる,無理解や誤解。
今自分がどのような感情を抱いているのか伝える手段がないまま施される教育や訓練,支援。これらが生を受けたときから始まっている方々。
一番「ありがとう」と伝えたい人の疲れた表情や言動に,自己否定の深い闇を巡らせ,全て「いま自分がここに障がい者として生まれてきたから」と考えてしまう彼ら。
そんな彼らをみつめ,心の声を探り,「本当にしたいこと,伝えたいことはなに?」と問いかけ続ける。
心の声が理解できたとき,「ごめんね,わかってあげられなくて,苦しかったよね」と謝罪もきちんとする。
一つその答えがみつかっても,また新たな答え探しが始まる。よりよい生き方を求める権利はだれにでもあるから。
そう,私だったら,すぐに行動し,自ら欲求を満たすことができる。だから,日常全く意識しないくらい普通なこと。
でも,彼らは何年もその不自由さのなかで彷徨っている。不自由を強いられる期間があまりに長く,諦めや失望・絶望を繰り返さざるを得ない彼らのために挑戦をあきらめない本物の支援者達。
なぜ本物の支援・挑戦を諦めないのか?
生きづらさの極みを抱えている人からの一瞬のメッセージ,そこに溢れる利他的な優しさ,本物さに救われるから。
結局,支援することを通じて,支援される側から,己が生きていくための「ギフト」を受け取っていると心が感じたとき,まだできることがあると思えるようになり,それが本当の意思決定支援に繋がります。
また書籍の中の「故郷の味・おふくろの味」のくだり,4人の子をもつ母として,胸が締め付けられました。
愛された(自分の為に作られた)記憶が付着している大好きな味
それを食べるときの幸福感,快感,家族の一体感,安心感までも「付着」したそれを吸収することで満たされる。
それが,自らの幸せ獲得ツールであり,幸せおすそ分けツールにもなり,対人関係ツールにも変換されていく。
愛着から人生は始まり,人は愛着というこころの栄養剤をとりながら生きているというお話。
いくつになっても,いつでも。
もっと,もっと家族の食事を大事にしようと思いました。
書籍の締めくくりにおいて
プロフェッショナルとは
「誠実であること」「挑戦し続けること」「変化し続けること」
一生発展途上,一生通過点。
著者の流儀がどの仕事にも通じるものであると思うと同時に
是非多くの方に読んでいただきたい,そう思える書籍です。
社労士・行政書士 かしむら