あきらめない~働くあなたに贈る真実のメッセージ
穏やかな春の風が吹く週末
私は1冊の単行本に出会いました。
あきらめない―働く女性に贈る愛と勇気のメッセージ 日経ビジネス人文庫 村木 厚子 (著)
テレビ画面の国会で,説明をする彼女を見かけてから何時が経過したのでしょうか。
そのぐらい記憶の彼方にある映像。ただ,お名前とお顔は鮮明に私の脳裏に焼きついていました。理由はわかりません。
逮捕,起訴,拘留,裁判
そのいずれもが,彼女から遠いところにあるような印象を受けました。
ただ,報道内容から対極にある彼女の印象がかえってマスコミや真実を知らない世間を引きつけました。
あの人はその後どうなったのだろう。
最近,「あの人は今」的な番組が多いですね。
本人が語っている以上,出演している以上真実なのでしょう。
ただ,あまりに短い時間で,エンターテイメントとして表現されるそれは,少ししんどかったりします。
「あきらめない 働くあなたに贈る真実のメッセージ」
実直な彼女の表情を思い出し,静かにでも彼女の意志や,こころの動きがかんじられるものであったらと思い読み進めました。
センセーショナルな事件の回顧録ではなく,彼女の「生きるスタンス」がどのようにして作られたのか,彼女の細胞がどのように構成されてきたのかが表現されていました。
事件の最中,逮捕拘留,連日の取り調べの中で,一つの表現,一つの言い回しに妥協せず,巧妙に仕組まれた罠に細心の注意を向ける毎日は,想像するだけで涙がでました。
読書家で,重要な書類を作成するお仕事も多くされてきた方であったことが幸いしたのかもしれませんが,並みの精神力では耐えられないことでしょう。
本の中の彼女は最初から最後まで静かで,丁寧に語ります。
読者が喜ぶような「盛」や,興味を煽るような表現は一切ない。
でも,職業人として真摯に積み重ねてきたものを担当検事が言葉ひとつで踏みにじったとき,絞り出すような悔しさを表現していました。それがより一層際立ちました。
きっと,この本を出版する際も一字一句自身の想いの表現が間違えていないか時間をかけてみたのではないだろうか,そう,自然に想いました。
「尊厳」
すべての個人が人間として有する人格を不可侵のものとし、これを相互に尊重する原理
職業人として「尊厳」を重んじることができたなら,今回のようなことにはならず,どこかで歯止めがかかったかもしれません。
それでも時に人は弱くて,自己都合を優先する生き物です。
そんなときに「どのように生きてきたか」が自分を支えてくれるのでしょう
誠実に,無理せず一歩ずつ。
これからの生き方の参考となる書籍でした。
社労士・行政書士 かしむら