文章の構造を知る
🔶文章表現の四つの構造/栗原文夫著/右文書院
⾃分の「知」を,新たな「体験」によって確認する。
表現する主体の「知」が,主体の意志と関わりなく⽣じた「体験」と出会ったときその普遍化が達成されている。
名だたる⽂豪の書籍から新聞への投稿⽂まで、さまざまな⽂章を題材にし解説を試みている書籍です。
そんな⾵に読み解くものなのかと、ようやく⽂章の奥深くにある確信に触れた感動を、更に確認したい、再度味わいたい、著者と感情を共有したいと改めて題材となる⽂章を読む,その繰り返しで読みきりました。
題材となっている⽂章の表現⼒と,著者の⽂章に対する圧倒的な解説⼒に,だただひれ伏したくなる私がいました。
「なぜ、そう感じるのか」
「なぜ、そう思うのか」
を、こんなにも丁寧に説明を受けることはありません。
その説明は著者の主観の押し付けではなく、「そう、本当にそう!」と私の⼼と解説は重なり、さらに深い感動を⽣みます。
「読み⽅」を習うことは、私の少ない学⽣⽣活を振り返っても,記憶にありませんでした。
著者は「⽅法」の考察は,必ず「本質」の考察に⾏き着くとあとがきに残しています。
受験のための、解答を導くためだけの国語⼒は、結局その後の豊かな⼈⽣には結びつきません。
もっと本質に触れる機会があったならと切実に後悔する⾃分も再発⾒しました。
国語教師であった著者が、著書を通じて、「本質」の考察ができる教育を訴えているのだと最後のあとがきから読み取りました。
「本を読む」とは、書かれている⽂章を⼼で受け取り、なぜそう考えるのだろうかと、まず作者と⾃分と⽴場を変えて想像してみる静かな時間が必要です。
そして、⾃分以外の⼈と共有し、会話をすることでより理解が深まります。
今流行りの,⼀瞬の切り取りの映像や画像と,誰もが発する単語は、インパクト重視に偏ります。
⾃分の気持ちだけを発する「ぼっち」⾏為と,いいか悪いかだけの顔の見えない評価。それもいい,でもそこでは決して得られない「物事の本質」を意識できる教えはどこから始まるのでしょうか。
絵本を持ち帰る⼦供がいる今、読み聞かせと共に、
「どうしてだろうね?」
「なんでそう思うの?」
少しずつ、こんな会話をしていこうと思います。
社労士・行政書士 かしむら
【追記】大きな書店で本書を発見したとき,自分にはまだ早い(仕事に直結する書籍を優先したい)という気持ちがありました。しかし,謙虚で滋味にあふれたタイトルが忘れられず,数日後にネットで購入しました。年末年始の宿題と考えていましたが,例にもれず,例のごとく,食べて寝る年末年始となり,完読したのは正月から10日ほど過ぎた頃です。急がず丁寧に,時に思考を巡らせながら読んで良かった。人と向き合い,人生の情景や心情に触れた感動が本書にはありました。(司法書士柏村)